【抗議】東京トランスマーチ2022の運営状況におけるTGJPの対応について

ありえないデモ

2022/11/16 17:00

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ありえないデモは、TGJPさんが #東京トランスマーチ で、ボランティアスタッフたちにしたハラスメントに対して抗議します。その声明文を画像で掲載していますので、お読みください。人権回復に必要な運動を続けるために改善を要求します。

#トランスマーチボランティアに連帯します

#私たちの声を聞け

 

【抗議】東京トランスマーチ2022の運営状況におけるTGJPの対応について

1.自己紹介
こんにちは、ありえないデモ(Twitter/IG: @arienai_demo)です。わたしたちは、生殖や性別のあり方に国が介入している現状を問題化し、トランスジェンダーの性別や名前の変更を規定する法律や制度運用などを、すでに生きられている生に合わせるよう要求しています。
また、わたしたちは、デモへの参加を望む人へのアクセシビリティ保障を重視し、トランスジェンダー差別だけでなく障害者差別や人種差別などあらゆる差別に反対し、広義のトランスジェンダー・コミュニティ内で交差的に周縁化されてきた人を含む様々なマイノリティが安心して参加・発言できるデモ運営を目指しています。現在は主に毎月一度、新宿駅前の車いすアクセスの容易な場所で、手話通訳付きのデモを開催しています。

2.東京トランスマーチ2022の準備段階での問題
わたしたちありえないデモは、今回の東京トランスマーチ2022(以下、トランスマーチ、マーチ)には共催団体として関わり、4号車フロートを担当していました。しかしその準備にあたって、トランスマーチの主催団体であるTRANSGENDER JAPAN(以下、TGJP)との間で、TGJPによる共催団体との連携や情報共有の不十分さ、アクセシビリティ保障や参加者の安全・安心に十分に配慮していなかったことなど、様々な問題がありました。

たとえば、手話通訳に関しては、ステージだけでなくマーチやブースエリアにも、特にトラブルがあった際にろう者・難聴者が安心してコミュニケーションを取れるよう、プロの通訳士を複数名配置することを要請していましたが、TGJPからは予期せぬ予算オーバーのためステージにしかプロの通訳士をつけられないと言われました。本来の優先順位は逆で、あくまでアクセシビリティを保障するための予算を確保した上で、規模を大きくしたり、イベントを盛り上げるためのその他の費用にお金を回すべきであったとわたしたちは考えています。
さらに、当日のタイムテーブルや、通訳士が何人・どこに配置されるかについての情報共有が要領を得ず、ありえないデモの運営メンバーから繰り返し問い合わせがあったにもかかわらず、最終的にTGJPから「プロの手話通訳士がついているのがステージのみである」ことを知らされたのは開催の3日前でした。急遽、次善の策として手話通訳のボランティアを募集し、配置、通訳内容、連絡手段などを全てこちらで決め、手配することになりました。なお、ボランティアのみでは、万一トラブルがあった場合の対応フローに不安があったため、ステージを担当することになっていたプロの通訳士にマーチでの通訳も担当してくださるよう、トランスマーチ開催直前にありえないデモ側から依頼したのですが、その際の手話通訳士への謝金は、TGJPがありえないデモのフロートの飾りつけ費用として用意してくださった予算から捻出してもらいました。
マーチ当日の警察対応においても、本来最重視すべき、車いすユーザーや杖をついて歩く人、ベビーカーを押している人など様々な参加者の安全確保のために十分な間隔を開けたりゆっくりと歩くことよりも、警察の指導に従ってマーチをコンパクトに・手短に収めることを優先させているという印象を拭い切れませんでした。TGJPがマーチの際に積極的にプロの手話

通訳士をつけなかったことも、いざという時に聴者を前提とした情報(例えば、警察の笛や車のクラクションなど)から遮断され、トラブルに巻き込まれやすいろう者・難聴者の安全を十分に考慮した判断とは言えません。さらに、警察対応について、参加者の安全・安心への責任を全うするために、少なくともフロートを担当している共催団体は打ち合わせ段階からもっと綿密に主催者と連携するべきだったとわたしたちは考えていますが、詳しい情報は直接わたしたちに伝えられることはありませんでした。そのため、通常の参加者と同じく、TGJPの公式サイトでの声明を通じてはじめて情報が得られるような形であり、連携体制に不安を覚えました。
また、当日のスケジュールやフロート車の飾りつけ準備について、ろう者である運営メンバーのひとりがLINEグループで質問した際にも1週間以上返信がなかったり、その後のやり取りにおいても、聴者である運営メンバーには反応があるが自分はなかなか直接返答を得られない、など、「軽視されている」と感じたこともありました。前日の準備・マーチ当日にも、TGJP側の運営メンバーから、この運営メンバーの不信感を払拭するような働きかけはなく、「よそよそしい」と感じられる態度で接する方もおり、ただでさえ団体や個人としての影響力にも社会運動におけるキャリアにも上下関係が存在する中、萎縮してしまいコミュニケーションが取りづらい状況がありました(その場にいた聴者から後に聞いた話では、このメンバーへの不当な発言もあったそうです)。ろう者は、普段から聴者中心の空間において周囲が自分の頭越しに話すなど存在を無視されたり面倒くさそうに扱われるという経験を重ねていることが多く、そのような経験に起因する不安を取り除くには、現状ではマジョリティ側から積極的に「あなたを無視していない」「あなたのニーズに応える用意がある」という明確な意思表示を行うべきであると、わたしたちは考えています。したがっ

て、仮にTGJPによるレスポンスの悪さが軽視でなく多忙によるものだったとしても、それは聴者中心の関係性を是正し、この運営メンバーが安心して参加できるようにするための姿勢としては不十分だったと言えます。
他にも、マーチの際に撮影禁止エリアが設けられず、しかも「参加者の自衛に任せる」という告知が(わたしたちの知る限り)当日になって初めてされる、という参加者の安全を軽視した決定がありました。わたしたちは、前年のトランスマーチ同様、撮影禁止エリアが当然設けられるものと思っており、そのアナウンスで初めて知らされました。もちろん、フロート運営団体として、撮影禁止エリアについてTGJPに積極的に確認しなかったわたしたちも責任の一部を負っており、アウティングの危険に晒された参加者の皆さまに深くお詫びすると共に、再発防止に務めることを約束します。ただし、このような参加者の安全にかかわる重大な決定について事前に情報共有する義務は、最終的には主催者のTGJPにあると思います。事前に十分な情報共有があれば、わたしたちも対策できていたはずです。
全体として、トランスマーチの運営の中心的な意思決定の場に、共催団体が、そして、ろう者を含む様々な障害者やマイノリティが対等な存在として最初からもっと含まれていたら、このような問題は防げたのではないかと思います。TGJP側からの情報伝達の負担を極力増やさずに連携を強化するために、わたしたちや他の協賛団体のメンバーが代表としてトランスマーチについての意思決定の場に直接同席させてもらうことを提案したりもしましたが、結局、今回は実現しませんでした。

3.運営メンバーのボランティアスタッフへの対応について―開催前
そして、今回のトランスマーチにボランティアスタッフとして関わられ、情報共有が不十分であることをTGJPに指摘したナナシマさん(Twitter: @y_mary_mary)・ユウさん(Twitter: @Blake_FAfree)・Nightさんらが、TGJP運営メンバーによって威圧的な態度を取られ、オープンチャットから排除されかけたという出来事がありました。ナナシマさんはこのことを告発するためにトランスマーチオープンチャットのスクリーンショットを公表されていましたが、スクリーンショットから読み取れる運営側の対応はひどいものでした。
まず、ナナシマさんが運営側に伝えた「聞きにいかないと情報が共有されない状態」や「共有されてる情報に偏りがあること」は、前述のとおり、わたしたちもTGJPに対して感じていたことです。ボランティアスタッフの中にはナナシマさんの他にも複数人、TGJPからの情報共有が不十分であることへの不安を訴えた方がいますが、それに対しTGJPは「主体的に動けるひとを育てる」ためだと述べています。しかし、主催団体のメンバーが共催団体やボランティアスタッフに情報共有を行うことは主催団体が担わなければいけない業務であり、それが十分でないことを「主体的に動けるひとを育てる」ためだと正当化することはできないはずです。
くわえて、ナナシマさんが告発したオープンチャットのやりとりの中では、運営メンバーがTGJPメンバーらの社会運動のキャリアを持ち出した上で、問題提起をしたボランティアスタッフに「今回のボランティアについてはご辞退いただくこと」をすすめるという言動が見られました。実際

に、TGJPの運営メンバーとして活動されている方の中には活動家として広く知られ、社会的な信用を勝ち得ている方が多くいます。けれどそうした経歴を批判への応答として持ち出すのは適切ではありませんし、ボランティアスタッフを強く威圧する効果があったはずです。運営メンバーはボランティアスタッフとの権力関係の上下性を自身で強調した上で、「今回のボランティアについてはご辞退いただくこともよろしいのではないかと考えております。明日の秋の晴れた土曜日を、お互いに気持ちよく過ごしたいですし」というように述べています。しかし、問題提起を無視され続けた状態でボランティアスタッフを降りても、トランスマーチ当日を「気持ちよく過ご」せるはずはありません。運営メンバーがここで「お互いに」と述べているのは前述の権力関係を意図的に無視し、隠蔽しようとする悪質な振る舞いです。
また、オープンチャット内では他のボランティアスタッフがナナシマさんへの個人攻撃を行う場面がありましたが、運営メンバーはそうした攻撃を無視していました。

4.運営メンバーのボランティアスタッフへの対応について―開催後
ナナシマさん・Nightさん・ユウさんは開催後も、運営メンバーとのやり取りを続けられていたそうですが、やり取りの中では運営メンバーが「自分や他人を深く傷つけてしまうくらいだったら、ボランティアなどには参加しない方が良いです」といったように今回の問題の責任をナナシマ

さんたちに押し付けた上で一方的なアドバイスを行っています。また、「責任をもってボランティア統括をやっていただけそうな、経験豊富な方を外部からも招聘すべく、あらゆる人脈で打診をしたのも事実ですが、スケジュールの都合やご本人のいわゆる本業の業務不可の問題等で、すべて断られてしまいました。そんな中でズルズルと本番を迎えてしまったのです。うまくいくわけはありませんよね」のように、運営の不手際を仕方なかったことかのように開き直り、マーチに参加したボランティアスタッフに不足があったように読める文章を投稿しています。運営メンバーは「今回のことで言えば、TGJPがボランティアの負担レベルや条件等を深く考えることに思い至らず、そういったことを提示せずにボランティアを公募してしまったことが問題であったとも思っており、反省しています」という反省文も投稿していますが、ここでは運営側とボランティアにミスマッチがあったという認識が前提とされており、ナナシマさんたちが指摘していた運営側の不十分な情報共有や、Nightさんやナナシマさんを威圧し排除しようとしたこと、ナナシマさんへの個人攻撃を無視していたことなどは問題化されていません。
11月14日夜には運営側の別メンバーから情報共有が不十分であったことへの謝罪がなされましたが、そこでも前述の加害は問題化されておらず、その後ナナシマさんたちに予告や相談なしにチャット自体が閉じられるという対応が取られました。
さらに11月15日夕方には、トランスマーチ支援者用の「クラウドファウンディング特典の専用グループチャット」というLINEオープンチャットでも、ボランティアスタッフによる告発についてTGJPに説明を求めた支援者

にTGJPメンバーの一人が送った回答に批判と質問を行ったナナシマさんに対して、当該のTGJPメンバーが、「見る人を不快にする発言は慎んでください。すでにナナシマ様他からのご意見等については、TGJP内で確認した後、期限内に回答申し上げるとお伝えしているはずです。このような発言をこのOCで繰り返すのであれば、恐れ入りますがこのOCからは強制退会していただきます。ご了承ください」と、クラウドファウンディング支援者の権利である特典チャットからも強制退会を示唆しました。「運動キャリアの長い主催者団体メンバー」対「いちボランティアスタッフ」という非対称な権力関係を無視したまま、運営体制への批判や不信感を表明したボランティアスタッフに対してトーンポリシングを行い、排除しようとし、精神的に追い詰める、明らかなパワーハラスメント行為がトランスマーチ開催後も繰り返されています。しかも、オープンチャットの他の参加者の一部からは、目の前で起きたこの行為を対等な立場の仲間同士の「思いやり」の欠如の問題にすり替えてナナシマさんの訴えを無効化しようとする、という二次加害が発生している状況です。

5.さいごに
以上のような対応はナナシマさんたち、運営側に問題提起をしたボランティアスタッフへの反応として明らかに不誠実です。また、自身らの運動歴を持ち出してボランティアスタッフを威圧しておきながら、警察側の何ら法的根拠のない要求には準じるという対応にもわたしたちは憤りを感じています。根底には、「ボランティアスタッフが一緒にトランスマーチを作り上げていく対等な存在である」という意識の欠如、そして同時に運動体内の権力関係への無自覚があるのではないかと思います。

もちろんTGJPがトランスマーチの開催に尽力されたことや、それが多くのトランスやノンバイナリーの人々にとって生存の糧となっている状況は素晴らしいもので、今後も差別が解消されるまでこういった活動が続けられることをわたしたちも望んでいますが、活動の中で誰かが暴力を振るわれることはあってはなりません。トランスやノンバイナリーの権利回復のためにトランスマーチに参加することと、自分がハラスメント被害を受けることを天秤にかけなければいけない状況はおかしいです。
また、TGJPのメンバーの皆さんがそれぞれ他の仕事でもお忙しい中、圧倒的に少ないリソースでイベント運営を回しておられたことは、わたしたちも理解しており、敬意を表します。ただ、限られたリソースの制約内でイベントを成功させるには、適切なプライオリティの設定が必要です。様々なマイノリティ性をもつ人も含めた全ての参加者が安全に安心してイベントを楽しめるようにすることが、まず何よりも優先されるべきではなかったでしょうか。そして、そのためには、ボランティアスタッフや小規模な協賛団体も対等な協働相手として尊重されるための十分な情報共有や権力関係への配慮とハラスメント対策が不可欠だとわたしたちは考えます。スタッフ自身の人権が守られるべきであることはもちろん、より周縁化された立場のスタッフや関係者が問題提起をしづらい運営体制では、より周縁化された立場の参加者たちが直面しがちなリスクへの対応も後回しになり、結果的にかれら/わたしたちの安全が守りづらくなるからです。
TGJPは、ナナシマさん・ユウさん・Nightさんらボランティアスタッフを威圧し、問題提起を無視し続けるという対応を今すぐ改め、二次加害を止めてください。経済的、人員的、時間的な負担を言い訳にせず、「トラブル」「すれ違い」などの表現で権力関係をあやふやにせず、複数のハラスメントや加害や排除の事実を認めてください。

「『あらゆる暴力、加害、排除、ハラスメントを許さない。一般参加者へのリスペクト、ボランティアへのリスペクト、賛同団体へのリスペクト、スタッフ同士のリスペクトを忘れず、全員が気持ちよく連帯できるセーフスペースとしてマーチを成功させる』という姿勢を見せてください」というボランティアスタッフの方々の要望(詳細は別の声明にまとめて公表される予定です)に真摯に向き合い、問題の再発防止のために協働を続けることを、ありえないデモ運営メンバーのわたしたちも、強く求めます。
なお余談ですが、TGJPからの情報共有不足と上意下達式の運営の問題は、わたしたちも10月に行われた院内集会「トランスジェンダー国会」の時から感じており(結果的に趣旨には賛同したとはいえ、わたしたちの事前の同意なしに一方的に協力団体として追加され、開催2週間前に届いたチラシでそのことを知りました)、改善を要請していたことでもあります。もっと早い段階で公に問題提起をしていれば、今回の問題も未然に防げたかもしれないとわたしたち自身、責任を感じています。今後はあくまでスタッフや参加者の尊重と安全を保障できる範囲内の規模で、協力団体やボランティアスタッフを対等なパートナーとして扱った上でイベントを開催することをTGJPに望みますし、わたしたちはそのように約束してくださる団体とのみ連携に応じます。
2022年11月16日
ありえないデモ
運営メンバー一同

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